労働安全コンサルタント試験合格体験記(その4)(2020年度 電気安全合格)
労働安全コンサルタント試験合格体験記
(2020年度 電気安全合格) Asum会員 Ko
0.はじめに
労働衛生コンサルタント合格体験記①に引き続き、幸いにして2020年度労働安全コンサルタント電気安全に合格いたしましたので、合格体験記を寄稿させていただきます。
2018年度の労働安全コンサルタント合格後、2019年は筆記試験不合格、2020年合格と1年の不合格の経験には、私的な明確な失敗理由もありますので、そういったところも参考にしていただければ幸いです。
私のバックボーンおよび労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタントの受験を決意した経緯については、前回のレポート(労働衛生コンサルタント試験合格体験記(その1))を参照ください。
1.受験の動機
労働衛生コンサルタント保健衛生に2018年度に合格し、次の目標は労働安全コンサルタントの取得でした。
労働衛生コンサルタントの受験を通じ、安全衛生の仕事の内容について一から見直すきっかけを得たことは、私のキャリアにおいて重要な転換点でした。今携わっている業務について棚卸を行い、自分の今いる立ち位置と力量を見直すことは、労働衛生の管理の現場で非常に役に立ちました。
同様にもう一つの柱である安全についても自分の中に確たる基盤を作る必要を感じ、その方策の一つが労働安全コンサルタントの取得であると考えました。そのため、労働衛生コンサルタントの合格直後より、労働安全コンサルタントの受験を決意し、受験準備を始めました。
受験の区分としては、自己の業務経験と大学での専門分野から、受験の候補に挙がったのが電気・機械・化学でした。電気は第2種電気主任技術者として、特別高圧の電気設備の管理の経験があり、ある程度の知見はありました。まずは自分の中で一番知見が積みあがっておりなじみのある電気を受験することにしました。
2.1年目の筆記試験(2019)
1年目の試験準備も、2019年のGW明けよりスタートしました。
過去8年分の過去問はすでに手元にありましたので、前年度同様基本書となるテキストを探すことを始めました。実務に役立てるためには簡単なテキストをやりこむよりはしっかりしたテキストを1冊読みこんで、そののち過去問に取り組むのが良いだろうと思い、「新しい時代の安全管理」(大関親著 中災防発行)を購入し、サブノートを作りながら、読み進めていきました。なお、この時点では、電気の筆記試験は電験も持っていることもあり、直前の対策で何とかなるだろうと楽観視していました。
この年の敗因はここでした。予想外にサブノートを作るのにてこずり、最終的に、9月中旬にようやくサブノート作成が完了し、実際の過去問および電気の筆記試験に取り掛かれたのは、約1か月しかありませんでした。しかもこの時点ではほとんど専門科目の勉強ができていません。
結果として、マークシートの問題はそれなりに点が取れるようになっていたが、筆記試験は電気主任技術者の試験内容で点が取れるものと、「新しい時代の安全管理」に簡単に触れられている内容のみで、受験をすることになりました。
完全に作戦ミスがたたり、明らかな準備不足で試験に臨むことになりました。
それでもマークシートは安全一般19/30、安全法規10/15と、それなりに期待できる点数が取れました。筆記試験の内容は、論説はクレーンの電波障害、防爆機器の基本構造、計算問題は漏電発生時に被災者に生じる電流、ロール機の静電気対策でした。論説は、「新しい時代の安全管理」の知識の範囲でうろ覚えで回答し、漏電の計算問題を何とか完答で試験を終えました。試験後の手ごたえは五分五分といったところでした。
その後約2か月、合格を期待して12月の筆記試験の発表を待ちましたが、残念ながら不合格でした
2019年の敗因は、
①テキストの習得に時間をかけすぎ、過去問演習に時間を十分に取れなかった
②電気安全に関しては、電気主任技術者の視点だけではなく、電気の安全の専門家の視点。具体的には静電気や防爆ところが習得できていなかった
に2点です。特に、②の点は今後電気安全の専門家として活動していく際致命的なことになるので、次年度意識して習得する必要を感じました。
3.2年目の筆記試験(2020)
2年目の受験は、1年目の反省から、次の2点を行うことにしました。
1:過去問演習を中心に学習する
2:防爆、静電気、電波障害、避雷、アーク溶接など、電気安全の専門家として知っておくべき知識については時間を割いて習得する
1については、テクノリアライズという会社が労働安全コンサルタントの問題集を作成していましたので、テキストと共に購入し、繰り返し問題集を解きました。その後、過去問10年分を繰り返しました。
2に関しては、防爆セーフティアセッサーのテキストやアーク溶接や高圧特別高圧特別教育のテキストなどの基本書を購入し、知識の習得と整理を行いました。また、ここも過去問を中心にアウトプットを行い、過去問の関係する問題を100%回答できるようにしました。計算問題に関しては電験2種3種の問題集を引っ張り出して復習し、電気計算の勘を取り戻しました。
私はやはりアウトプット中心の勉強の方が性に合うようです。この年は2019年と違い、自信をもって筆記試験本番を迎えることができました。
3.筆記試験
筆記試験では衛生コンサルタントの受験じ同様に、試験日の二日前からビジネスホテルに泊まり、最後の仕上げを集中して行いました。3年続いてのこのわがままを許してくれている家族には感謝しかありません。
筆記試験のマークシートの結果は、安全一般が21/30、法令が12/15でした。
専門科目は漏電遮断器の動作原理に関する問題、電気の安全器具に関する一般問題、防爆・静電気・感電に関する基本事項を問う問題、特別高圧送電線付近でクレーンを操作する場合の感電防止対策、静電気放電に関する計算問題でした。
この年は、わたしにとっては非常にラッキーな年でした。漏電遮断器の原理に関しては電気の保安教育として社内に教育を実施したところで、知識が完ぺきな状態でした。特高送電線付近での事故防止対策は、ある意味毎年特高変電所の整備の際に実施している業務内容を記載したらいいだけの内容です。4問中2問が普段の業務に関係している内容で、自信をもって回答できました。今回、経験した実務に関係する問題が選択でき自信をもって回答できたことで、改めてこの資格は実務者のための資格なのだなあと実感した次第です。
マークシートの手ごたえもあったこともあり、2回目にしてようやく筆記試験の合格が確信できました。
4.⼝述試験対策
口述試験に関しては、労働衛生コンサルタントで受験の経験があったので、正直あまり不安視はしていませんでした。別の資格やTOEICなどに少し浮気をしており、勉強を開始したのは年末年始の休暇中でした。
はじめてすぐ、「すこし油断をしすぎた、やばい!」と焦りを感じたものの、労働衛生コンサルタントの時の経験を思い出しながら、自分の業務経験や経験した労働災害とその対策、最近の労働災害の例などをまとめ始めました。ある程度喋るためのネタが収集できた段階で、アウトプットのための想定問答集を作り始めました。
想定問答集を作っている段階でASUMの先生方による模擬面接を受けることができ、「今のレベルだと確実に落ちる」という焦りを感じたのと同時に、どのような形で質問がで、答える方針とまとめ方についてアドバイスを頂けたことも大変役に立ちました。
試験前には筆記試験同様ホテルに泊まりこんで想定問答集のまとめと、練習を行いました。
5.⼝述試験
当日の試験には、試験時間の1時間ほど前につきました。予定されていたより30分ほど早く試験が始まりました。試験の内容を覚えている範囲で記載します。
試験官は3名でおそらく向かって左の方が電気安全の専門家、真ん中の方が官公庁の方、右の方が中災防もしくは試験センターの職員の方ではないかと思います(労働衛生コンサルタントの受験時と同様です)。
Q(真ん中の方):受験の動機はなんですか?
⇒「安全衛生の仕事に安全衛生事務局として10年程度携わり、また、5年前に社内に安全衛生の専門のチームの立ち上げに中心として携わることになました。
その業務を行っていく中で、安全衛生という分野に関する知識の整理と向上の必要性を感じたのと、安全衛生を一生の仕事にしたいと思い、一昨年の労働衛生コンサルタントの取得に続き、労働安全コンサルタントの受験を決意をしました。
Q(真ん中の方):安全の経験について説明してください。
⇒10年程前より自動車部品製造業の会社で、安全衛生委員会の事務局の活動を行っていました。具体的にはヒヤリハットの集計や、KY活動の推進、安全パトロールの実施などです。5年前の専門のチームの立ち上げ後は、リスクアセスメント活動の推進や、マネジメントシステムの導入・指導などを行いました。
Q(真ん中の方):受験区分が電気である理由は何ですか?
⇒第2種電気主任技術者を試験で習得し、特別高圧受電設備の管理を経験していたため、電気に関する知識と経験を持っていました。また、弊社は米国に本社を置くGlobal企業なのですが、弊社グループの電気安全の基準・ガイドラインを作成するプロジェクトに2018年から2019年に日本支社の中心メンバーとしてかかわり、直近の業務として電気安全へのかかわりが大きかったということもあります。以上2点の理由により、電気を選択しました。
Q(左の方):リスクアセスメントなど、横文字で今まで関わっていなかった活動を導入しようとすると、社内の反発が大きかったのではないですか?特にベテランの方など。
⇒はい、実際にそういう傾向はあり、丁寧に説明し活動の必要性を理解してもらいました。
Q(左の方):具体的には、どのように説明しましたか?
⇒安全パトロールやKY活動など、従来の活動では現実の労働災害が防ぎきれていない、その補完を行うためにリスクアセスメントが必要であることを、実例と共に説明しました。
具体的には、KY活動や安全パトロールは、オペレータが危険と思う場所に対し対策を行う手法ですが、そもそも危険と思わない場所には原理的に対策は実施されない。そのため、事故後に検証すると、事前に危険とは思っていなかったような場所での事故が非常に多い。
一方リスクアセスメントは、ハザード、リスクの順番で決定していくため、きちんとハザードを特定できれば、オペレータが危険と思うかどうかとは無関係にリスクを特定し、対策を打つことができる。
このようにKYとリスクアセスメントの本質的な違いを説明し、今までの活動を否定するのではなく、今までの活動で捕まえ切れていなかったリスクを捕まえるためにリスクアセスメントが必要である、そのように説明し、理解を求めました。
Q(左の方):リスクアセスメントとは何かを説明してもらおうと思っていましたが、今答えてもらっちゃいましたね(少し笑いながら)。実際にその説明で納得していただけましたか?
⇒はい、ハザード、リスクの順番でリスク抽出を行うリスクアセスメントだからこそ気が付けたリスクがあり、そういったところに対策を打つことができたこと。また、実際にすこしずつ事故が減ってきたこともあり、実体験としてリスクアセスメントの有用性は弊社内に浸透してきたと思います。
リスクアセスメントを行うことは、リスクについてコミュニケーションの機会を提供することであり、安全について語る場面を現場に提供できたことも、リスクアセスメントを根付かせるうえでの良い結果につながった要素の一つでした。
Q(真ん中の方):ここ数年で御社で労働災害が起きたことはありますか?
⇒はい、あります
Q(真ん中の方):そのうちの一つについて、どのような事故であり、どういったことが原因と考えられるのかを説明してください。
⇒昨年のグラインダーを使用した事故について説明させていただきます。保全の作業者が狭い空間でフレームカッターを使用し鉄骨を切断しようとしていましたが、フレームカッターでは鉄骨が切断できず、グラインダー作業に切り替えました。
その際、狭い作業場所であったため、ちゃんと工具を持つことができず、鉄骨作業中にグラインダーがノックバックを起こし、手を損傷し4針縫った事故がありました
原因ですが、二つあります。一つは、非定常作業において一度定めた手順がうまくいかないことが分かったときに、自己判断で作業手順を変えてしまったこと。もう一つは、グラインダーを使用する方法がまちがっていたことです。
Q(真ん中の方):その事故に対し、どのような対策が取られたかを一つだけ教えて下さい。
⇒グラインダーの使用頻度の高い部署から順番に、ノックバック防止機能付きのグラインダーに交換していく対策を取りました。
Q(右の方):アーク溶接におけるハザードにはどんなものがあるか、5つ答えてください
⇒(考えながら)粉じんヒューム、強烈な光による眼への悪影響、火花、電気、えーと(少し考えて)、中腰の姿勢を強いられることによる腰痛など人間工学的なハザードがあるかと思います
Q(右の方):アーク溶接をしている最中に、思わぬところが発火し、火災になることがあります。この原因と対策を説明してください。
⇒アーク溶接では、アースをできるだけ母材の近くに付けてやる必要がありますが、手抜きにより、溶接機の近くで母材と離れた位置にアースを取ることがあります。そうした場合ちゃんと回路が形成されず、迷走電流がながれ発火し火事につながるすることがあります。対策は、アースを母材の近くで取って確実に溶接の対象と電気的な回路を形成することです。
Q(右の方):防爆について質問させてください。爆発の危険から電気機器の使用を制限されているエリアに携帯電話を持ち込みたいとクライアントに相談されたらどのように答えますか?
⇒防爆に関しては、一般的な知識としては知っていますが、実際に業務として携わった経験は多くありません。ですので、その件を本当にコンサルタントとして取り扱う場合は、きちんと調べてからお答えすると思います。今回は、手持ちの知識からおそらくこうであろうという内容をこたえさせていただきます。
その場所が爆発管理上どのゾーンに区分されているのかを調べ、持っていこうとしている携帯電話がそのゾーンに持ち込んでいい防爆機能を持っているのかを調査します。もし防爆の性能が足りなければ、必要な防爆構造を持った携帯電話を推薦します。
Q(右の方):防爆のゾーンについて説明してください
⇒ゾーン0は最も危険で、危険物の水槽の油面の直上など、爆発雰囲気が連続して生成し最も危険最も高い場所です。ゾーン1は危険物による上記などが生成し爆発雰囲気になることが正常運転中にあり得る場所です。ゾーン2は、通常の操業中は爆発雰囲気になることはないが、容器の劣化や誤作動などで論理的にあり得る場所です(よく勉強していますね、とコメントいただきました)。
Q(左の方):最近、高年齢の方が現場に多くなってき、事故が多くなっています。そういった場合どのような対策が考えられますか?あなたの経験と共に回答してください。
⇒一般的には、明示を見やすくする、工場内に段差やでっぱりを無くす、照度を確保するなど、働きやすい環境を整えるといったことが考えられます。
私の経験では、転倒災害及び腰痛災害の防止として、作業前に体操を行う活動を行ったことがあります。
Q(左の方):体操を行おうと考えた理由について、説明して下さい
⇒ヒヤリハット報告などを見ていると、高齢者の方を中心に何もないところでの転倒もしくは転倒しかけたという報告が無視できない数で存在します。雑誌「健康と安全」などを参考にしながら検討を行い、そういった何もない場所での転倒に対策をするには、体操などにより基礎的体力の向上を試みることが効果的であると考えました。
6.結果発表と今後の取組み
口述試験に関してはほぼすべての設問に答えることができ、今年は試験直後に合格を確信していました。
今思えば、1年前試験に落ち、安全を基礎から見直しリスクアセスメントやOHSMS,あるいは電気安全について防爆や静電気などを一から整理ができたことは、自分にとって貴重な財産になったと思います。強がりでもありますが、1年前に受かっていたら、周辺分野をこんなにも深く勉強しようとは思わなかったでしょう。
今回の受験で分かったことは、まだまだ実務経験や知識が十分ではなく、今の業務を通じ、業務の経験を整理し、将来の独立に向け着実に力をつけていくように継続的な努力が必要ということです。労働安全コンサルタントの合格を機に、今年は労働安全衛生コンサルタント会に入会しました。次の目標としては生涯研修に参加しCSPやCOHの称号を得ることを目標とし、コンサルタントとして活躍できる日に備え実力を積んでいきたいと考えています。
以上
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