労働安全コンサルタント試験合格体験記(その2)(2020年度土木安全合格)

         労働安全コンサルタント試験合格体験記
            (2020年度土木安全合格)
                  一般社団法人 安全診断技術者協会 会員 Tj

1.受験の動機
   私は、瀬戸大橋、明石海峡大橋、しまなみ海道など本州と四国をつなぐ長大橋梁を含む高速道路の建設、管理を行う会社に勤めており、建設工事・維持修繕作業等の「発注者側の監督員」という立場での業務が主となります。
   平成3年に入社したのですが、この年に広島で発生した新交通システム(アストラムライン)の建設工事の事故があまりにも衝撃的で、当社と同業の災害とあって、一年生の私たちにも「安全第一」の熱い教育を受けたと記憶しています。
平成9年には愛媛県今治市にある来島海峡大橋を含む高速道路を建設する事務所に異動となりました。その翌年、私が「安全のプロ」を目指すきっかけとなった事故が起こります。来島海峡大橋は、世界初の3連吊橋として土木界では知られた話ですが、この建設工事で桁を架設するための「架設桁」が約60m下の地上に落下し、7人が亡くなり1人が重傷を負う大惨事が起きました。奇しくもこの時の私は工事全体の安全を司る担当課に所属していました。
私は安全担当課でありながら、上司に言われるがまま、災防協の案内送付や会議室のセッティング、工事担当課から上がってくる労災報告のとりまとめ・・・「いったい安全向上のために何か仕事ができたか?」と自問する日々が続きました。現場にも事務所にも「安全第一」と書かれた旗、ポスター、掲示板。事故後現場にも行きましたが、どれも色あせ、破れ、アリバイ的な文字に虚しさを感じました。
昔から官公庁を含め発注者側の監督員の技術レベルの低さは、業界紙の記事等で多く指摘されていたところであり、それは安全に関しても同様です。
―――「こんなことではいかん!」これが受験の動機です。27歳の時でした。

2.習うより慣れろ
   しかし、監督している目の前で、ユニックを使っている、玉掛作業をしている、高所作業車を使っている、チェーンソーを使っている、バックホウを使っている・・・でも何が危ないか分からない、ベテラン作業員だからやっていることは正しい(と思う)。社内でそれを教えてくれる人は居るはずもなく、私はこれらの技能講習や特別教育を個人的に受講し知識を増やしていきました。そして大型自動車免許までとって、死角や内輪差などを体感し、同僚からは、単に「資格マニア」にしか見られていなかったようです。『習うより慣れろ』これは私に合った学習法です。
よし、場数は踏んだ、ある程度の知識も得た(つもり)。いよいよ安コンを目指そう・・・。大手の本屋さんにもテキストがないことは衝撃でしたが、インターネットで入手した『試験合格への手引き』と試験問題集を購入したときには、もっと衝撃を受けました。ほんの10分で頭の中が?だらけです。

3.知識不足を痛感
   安コンへのチャレンジはあまりにも無謀すぎることを目の当たりにし、試験での一部免除要件でもある「一級土木施工管理技士」は取っておきたい。でも、ここ10年、社内でもなぜか建築工事(新築、改修、解体)の監督を任されることが多かったので「一級建築施工管理技士」を先に取ろう。でも、なかなかハードルは高く、それなら最も好きな造園から取ろうということで「一級造園施工管理技士」に挑戦しました。自分でも得意と感じていただけに、割と楽しく受験でき無事合格。勢いそのままに翌年、建築に合格、調子に乗ってその翌年土木に合格。
だいぶ遠回りしましたが、これで自信もついた。いよいよ安コンに挑戦しよう。
気が付けば47歳。安コン受験の意思を固めてから実に20年もかかってしまいました。

4.ここまできたら「目指せ!一発合格」

   ちょうど受験の意思を固めた春、岡山県倉敷市から神戸市へ転勤となり、単身生活+電車通勤生活+緊急事態宣言発令なども重なり、自分の時間が多く取れたことが結果としてよかったと思います。
使用テキストは、㈱テクノ・リアライズの「受験対策テキスト(上下巻)」に同社の「過去問題集」、市販の安全衛生法令要覧、安全の指標、労働安全衛生法のはなし・・・そして安コンのバイブルと紹介された「新しい時代の安全管理のすべて」が令和2年に第7版が出版されたので即買い。この時点で5万円以上を投資して「背水の陣」です。
   筆ペンで「労働安全コンサルタント一発合格」と揮毫し、机の前の壁に貼り、モチベーションを保てるよう環境を整えました。

5.スケジュールの設定
   受験対策テキスト上下巻(約440P)、過去問題集(約200P)を受験日までの日数で割り、2巡できるよう1日平均7Pペース(休日は20P位)で日付を書いた付箋紙を貼っていき、この付箋紙がどんどん減っていくことで達成感を得る、という方法で進めました。
 計画を立てる場合は、自分の土日の予定や会社での出張など分かっているスケジュールを反映させたノルマとし、できるだけ計画倒れにならないよう余裕代も設け、柔軟に前後させるなど(節目は変えない)、適度な緊張と緩和を保てる計画としました。

6.学習を習慣化
片道30分の通勤電車内、帰宅後の最低1時間、テレワーク時は通勤時間や残業がない分、+1~2時間を勉強に充てました。トイレの中やこたつの上にもキーワードを書いた単語帳を置いておき、見るところ見るところに「安全」を散在させ、学習を習慣化させました。これが本当の「安全の見える化」・・・なんてね。

7.得手を強化し、不得手を流す
   私は「土木」が本業なので、製造・電気・機械は強敵です。(割とそれが多い!)
  ひととおり過去問題集を解いて、章ごとに自分の得手不得手を把握し、今の知識でクリアできるものはヨシとして、逆にどう考えてもできそうにない問題は、心が折れてしまうので、ある程度の段階で「捨て問」と割り切りました。「捨て問」というと先生方に叱られますが、試験ではこういう判断も必要ですね。

8.筆記試験
   筆記試験は、全員が受験する「共通科目」と「専門科目」があります。専門科目は、先に取った「一級土木施工管理技士」で免除となりましたので、共通科目に専念しました。
共通科目は「産業安全一般」30問と「産業安全関係法令」15問であり、前者に「捨て問」(苦手問題)が多かったので、なんとか後者で稼ごうと思いましたが、振り返ったとき、あれほど気を付けていたイージーミスもあり、自分では得意と思っていた関係法令がやや低かった点が反省です。
   【自己採点】(㈱テクノ・リアライズ公開版で採点)
        産業安全一般   20/30(66%)
      産業安全関係法令  9/15(60%)
               29/45(64%)
9.口述試験
    口述試験で落ちると、来年は、また筆記試験から受けないといけないこともあり、かなり力を入れて準備しました。といいながら実際にエンジンがかかったのは12/21の合格発表後です。インターネットでの紹介がほとんどなかったので、前出の「試験合格への手引き」にある口述試験の体験記を熟読し、40問くらいの想定問答を作成し、それ以外の質問があったときは「今後引き続き勉強していきたい」という回答を用意していました。
回答のキーワードを書き込んだ単語帳を肌身離さず、電車で、風呂で、トイレで・・・ブツブツ唱えながらの1か月でした。奇をてらった質問はないはず、と体験記で紹介されており、凡そそんな感じで、記憶する範囲で以下の8点くらいだったと思います。
    (1)試験区分、受験番号、氏名     
  (2)受験の動機
  (3)安全に関する経験年数
  (4)事故の経験
  (5)客先が安全に対して消極的な場合の対応
  (6)安全にお金がかけられないと経営者が言っているがどう話す?
  (7)墜落災害を防止するためには?
  (8)ドラグショベルとダンプトラックで土砂運搬するときの安全対策は?
   多少、しゃべりすぎた感もあり、面接官の予定していた質問ができなかったのかもしれません。一度質問した面接官が再び最後に「少し時間があるので」と前置きをして想定内の(8)を聞いてくださったので、ギリギリ救われたような気がします。









10.安診協は「安心教」
   20年の集大成と位置付けている安コン試験がひとまず終わったことで、心穏やかに、コンサルタント会や中災防などのサイトを何気なくめくるのが日課となり、ある時に「安診協」のサイトに目が行きました。活動拠点が我が社にほど近く、これから安コンとして活動するために当会は絶好の組織であり、仮に試験不合格でもAsumには参加させていただこうと考えていました。
私の場合、会社勤めをしながらの活動となるため、社内でも相談を受けることがあるかと思います。そんなとき「ちょっと相談できる人たちが傍に居てくれる」ことが、大きな安心です。知識を向上させるためには、独学では限界があり「捨て問」は捨てたままになってしまいがちなので、先生方との交流や勉強会は絶対必要な場として、これからも崇拝していきたいと思っています。

11.安コン取って兜の緒を締める
安コンをとる前から、安全部署からも同僚からも「安全のことはあいつに聞け」と言っていただいていたようですが、無資格が故に、「なんちゃって安全屋」から脱却できませんでした。しかし、安コンを取り、当社の安全部署や役員、子会社の役員にもそのことを売り込んだことで、にわかに評価される雰囲気となってきました。
私の目標は『自社・子会社総勢千名の安全意識を改革し、安全技術の向上を図ること』であり、やりたいことがたくさんあります。私の指摘で、一人の命が助かるなら、悲しむ人が減るなら、安コン冥利に尽きると思います。
安コン取って兜の緒を締める・・・新たな人生の始まりです(ちょっと言い過ぎ?)。

12.最後に
   会社での安全に関する地位はあっても、安診協では1年生なので、可能な限りAsumに参加し、これからも安全技術の幅を広げていきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。また、今後受験される方におかれましては、強い意志を持って臨まれると必ずや良い結果に結びつくと思います。一緒に頑張りましょう。

     以上     一般社団法人 安全診断技術者協会会員